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憧れの旅館・ホテル

あらや滔々庵

 

山代温泉の中心、「総湯」を囲む「湯の曲輪」、歴史を刻む幾つかの老舗旅館の中にあって目立たない造りであった。温泉旅館総大型化の時代に、敢えてその道を選ばなかったのであろう。






玄関脇には、原泉「烏湯」が湧き出ており、そこで名物温泉たまごが作られていた。 玄関を入ると、一面の畳が目に飛び込む。館内すべての廊下は畳が敷き詰めてあり、なかでもロビーでは琉球畳(結城畳)の織りなす市松模様が目に清々しい。
ここではスリッパがないのが嬉しい。

 

 



  

女将を含む数人の女性の出迎えを受け、中の一人に部屋まで案内される。その女性が部屋係りであった。
部屋で、お薄と和菓子をふるまわれ、宿帳を記入した。

部屋は二階の「千草」、半露天風呂付きの部屋である。10畳の和室が二つ、そのうちのひとつには檜作りのローベッド(ツイン)が置かれている。
庭は、路地テラスとなっており半露天風呂からも見渡せる。

  


 

庭の向こうは表通りに面しているため生垣で視界が遮られていて、雪景色を見たいとの願いは諦めざるをえなかった。

 

和室は、特に手を掛けたという雰囲気ではなく、あっさり、すっきりといった感じである。床の間が無いのが寂しく思ったのは歳のせいであろうか。
どこにでも備え付けてあるライティングセットが無かった。普段使うことはないのであるが、無いとなれば、いざというときに極めて不便であった。

部屋の鍵がプラスチック製では、味も素っ気も無い。

 

(応対)

最初は心持ち緊張の様子が見て取れたが、次第にフレンドリーな応対になってきた。全体的に部屋係の人手が少ないのであろうか、「痒いところに手がとどく」といった応対ではなかった。

 

(大浴場と露天風呂)

大浴場は男女交代制である。両者とも石造りの浴槽の縁を檜で縁取りしてあるが、大きさにかなりの違いがある。大きい方は、本当に広々としていてその浴槽を満たす湯量は並大抵なものではないと想像できる。お湯はとても気持ちがよいが、やや湯あたりのする感があった。
露天風呂はやはり石造りで屋根付きであるが、目の前に山の中腹がせまっており開放感に乏しいのが難点である。他方の露天風呂は、屋根と塀に囲まれていて露天風呂といった趣ではない。
最近、特別浴室「烏湯」という浴室ができたが、かなりぬるい浴槽と、やや熱めの浴槽との二つからなり、交互浴をするための設備であるらしい。浴室内はミストがたちこめていてチェアーも備え付けてあったが、全体的に温度が低く、この時期としてはミスト浴が楽しめるものではなかった。
大浴場から出たところに、小さな休憩場所があり、シャンパン、缶ビール、ミネラルウォーターがサービスされてあったが、残念ながらシャンパンのボトルは既に空であった。ミカンもサービスで山盛りにおいてあった。

洗面タオルは豊富に備え付けられているが、バスタオルは部屋から持参することになっていた。なぜだろう?

 

(部屋風呂)

脱衣洗面所とシャワーブースと檜の浴槽からなるが、シャワーブースまでがガラス戸で仕切られている。
源泉掛け流しであり、滞在中いつでも好きなときに入浴できる。いざ浴槽に浸かってみると、なかなかの入り心地であった。
お湯に浸かった目線での路地テラスの造りも計算されていて、充分楽しめるものであった。

  


  

 

(夕食)

「旬の懐石膳」と「生蟹懐石膳」からなるが、予約時、追加料金で「蟹を含んだコース」があるとのこと、それを選択した。
お品書きはなかった。その日の食材の善し悪しで品目が決まるので作れないらしい。

 

  

 

  

 

 

  

  

 

 

  

  


橋立漁港で水揚げされたばかりのズワイガニの味は素晴らしかった。
三国の泥吐き蟹に比べて味噌がやや磯の香りが強かったが、同様に臭みがまったくなく、産地以外ではとても食べることが出来ないだろうと思えるものであった。
焼き蟹は部屋係りの女性が付きっきりで焼いてくれるのであるが、ややレアの微妙な焼き加減が絶妙で、上品な甘さ、舌触りが絶品であり、甲羅焼きの香ばしい匂いも素晴らしかった。
蟹も良かったが、それ以上にノドグロの塩焼きは旨かった。日本海の冬の魚も本当に美味しい。
全体的にやや塩味の強い味付けながら産地の物を上手に調理していると思ったが、椀物などの出汁味に少し不満が残った。
鰤茶漬けは、天然物といえどもとややくどかった。最後はもっとあっさりした方が良かったと思う。漬け物はとても旨かった。

 

(有栖川山荘)

本館四階から渡り廊下でつながっている。行灯や蝋燭の照明で仄暗いが、なかなか落ち着いたバーである。
客も多く十数人位いたと思うが、スタッフは一人で、てんてこ舞いであった。一人では大変だろう、しかし愛想の良い若者であった。

 

(寝具)

マットはコイルのものではなく厚手のウレタン製。その上に薄手のウレタンマットとベッドパットをシーツで巻き込んである。寝心地はやや硬めであるが、なかなか良かった。
充分こだわりを持って考えられた寝具だと思う。
掛布団は羽毛であろうか、リネン類の肌触りは普通といったところ。

和室の寝具の作りはベッドと同じであった。
  ただローベッド、歩いているときに目線から外れるのか、しばしば蹴躓くのが厄介であった。

  

新しい浴衣と、バスタオルが用意されてあった。バスタオルは最終的に一人3枚用意されていたことになる。

 

(朝食)

温泉たまごが美味しかった。
それ以外は、普通の朝食であり感動はなかった。
味噌汁の味の薄いのは不満、前夜の糟汁といい、味がふぬけている。

 

 

 

(感想)

到着時、少しばかりの行き違いで気まずい空気が流れましたが、その後の女将のフォローは素晴らしいものでした。ここまでしてくれるのかといった心使い、こちらが却って恐縮するほどでした。

最近、名宿探訪をするようになって「名宿」と「いい宿」の違いはなんなんだろうと考えます。「ここです」と明確に答えることはできませんが、厳然たる違いは存在します。
名宿のなかには、「俵屋」「あさば」「蓬莱」などのように長い年月の間に培われてきた宿、それとは正反対の、ゼロから始まりオーナーの強烈な個性のもと、短期間のうちに名声を築き上げた「御宿かわせみ」「半水盧」などがありますが、長い歴史を誇る老舗旅館のなかで今一歩「名宿」の域に達しきれない宿もあるように思われます。これらは歴史が却ってしがらみとなっているのではないかと思うところもあります。このしがらみをひとつひとつ振りほどいていくことが必要なのでしょうが、大変なエネルギーがいることでしょう。
ここ「あらや滔々庵」には、客を満足させようとするこだわり、(これは恐らく若主人の思いでしょう、発想に若さや現代的な点を感じます)を充分感じます。メールでの応対も素晴らしいものでした。
物足りない点もいくつかありましたが、「素晴らしいお湯」、「素晴らしい食材」があります、ここに女将の「心」、若主人の「思い」が加われば、きっと遠からず「名宿」の仲間入りができるのではないだろうか、そう感じた宿でした。

2005年1月中旬訪問

あらや滔々庵 の予約の際の参考に