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憧れの旅館・ホテル
半水盧再訪
今回も長崎空港からレンタカーの旅であった。時間に余裕があったので島原の町や普賢岳溶岩ドームを見ながら東側からの山道を登った。
鬱陶しい山道に関して言えば、地図のうえからは距離にさほど差はないような感じであったが、実際走ってみると曲がりくねった山道がとても長く感じた。小浜からの道の方がずっと楽である。
雲仙の温泉街を抜けると、特徴ある太鼓塀が見えてきた。
長屋門の前に車を止めると前回同様音もなく開いた。本館玄関前には女将が待ち受けていた。
フロントにはスーツ姿の男性と洋服の女性スタッフがいた。ここで宿帳を記入している間に男性スタッフが荷物を離れに運んでくれた。
じきに和服の女性が現れ、離れまで案内してくれたが紅葉はまだまだであった。
離れに着くと、お茶と和菓子がでた。この女性が部屋係であった。
離れは「水仙」。
前回の「弥生」と基本的な部屋の造りは同じである。
1棟を2客室に分け、それぞれ平入り玄関と妻入り玄関としていて出入り口の距離をとり、妻入り玄関の客室の多くを和洋室としているようである。
「水仙」は飾井戸のある二階玄関が特長的であった。
二階は、8畳の次の間と三点セットの置いてある広縁、夜に寝室となる10畳の座敷、檜造りの部屋風呂と立派なトイレからなる。窓からの眺望はまずまずである。
階段を降りると、渡り廊下に出ることができる一階の玄関スペース、8畳ほどの次の間と、食事をする場所となる13畳の座敷がある。一階の部屋の造りは素晴らしい。
しかし庭の眺めは塀の向こうが湯殿となっているせいか狭く、出来が良いとは言えない。
一階にもトイレがある。
(応対)
男性のフロントスタッフはとても親切で丁寧な応対であり好感が持てるが、女性スタッフはまだ若く、やや事務的であった。もう少し笑顔が欲しい。
部屋係の女性は前回の時より年齢が上がっており、とても良い応対であった。廊下ですれちがった他の部屋係の女性も笑顔が素晴らしくとても親切な受け答えをしてくれた。
印象的であったのは女将の奮闘振りであった。
フロントに常駐してすべての到着客を出迎え宿帳記入の間相手をし、そして夕食時部屋に挨拶に来て、最後はチェックアウトの時にフロントですべての宿泊客に挨拶をしていた。
(湯殿)
東西あるが、今回両方を制覇した。
お湯は硫黄泉で濁り湯である。加水しているが、かけ流しであり湯量はとても豊富であった。硫黄の匂いは温泉気分を満喫させてくれる。
屋内湯殿に関して東西それほどの違いはなかったが、露天風呂に関しては大きな差があった。「西の湯」のほうが広々としていて気持ちがよい。「西の湯」がお勧めである。
脱衣所には東西とも、サウナの後にと自然塩と冷水のセットが置いてあった。
(夕食)
前回よりも少しばかり味にばらつきを感じたが相変わらず出汁の味は素晴らしい。
しゃぶしゃぶ風に食べる名残鱧、残念ながら旬を過ぎていた。文字通り名残りであった。新鮮な刺身は塩と酢橘だけで食べてもとても美味しい。かます寿司は口当たりが絶妙、八寸は吉兆風で、見るからに芸術的である。出汁が良いので、炊合わせも絶品。湯葉も本当に美味しかった。
もう一つ残念なことには果物の甘さが今ひとつであったことだ。果物の出来がよくないと画竜点睛を欠く。
全体的には相変わらず素晴らしい夕食であった。
(寝具)
超豪華な寝具である。今まで経験した宿のなかでは、「俵屋」・「あさば」・「強羅花壇」と並ぶ。今回はリネンの素晴らしさも相まって比類なき寝心地を与えてくれた。
肌触りの良い極上のカバーやシーツは幸せを与えてくれる。
(部屋風呂)
立派な風呂なのだが沸かし湯とのこと、それから東西の湯殿が使えたので、結局未使用であった。
(朝食)
本当に美味しい朝食であった。今まで経験したなかでは前回ともども最高の朝食である。
まずアオサの味噌汁は絶品、烏賊の塩辛と山葵の相性も驚愕、明太子も極上の味、温泉玉子や饂飩の出汁も最高、サラダのドレッシングも絶妙な味わい、デザートのアングレーズソースも申し分なかった。しかし最後のコーヒーがいまいちであったのは愛嬌か。
(感想)
二年ぶりの訪れでしたが、やはり素晴らしい宿でした。
バブル真最中に建てられた部屋は細かな所まで意匠が施されています。
今後、これほどの宿を作るということは到底不可能なことではないかとすら思ってしまいます。ハードでは文句なしに日本一ではないでしょうか。
しかしソフトに関しては細かな点で「??」と感ずるところもありました。
湯殿の風呂桶と椅子がプラスチック製であったこと。浴室に響く檜の風呂桶の音は旅情を高めてくれます。
夕食時、日本酒が瓶のまま出てきたこと。少しでも気の利いた割烹なら氷に浸したガラス容器に移し替えてくれるでしょう。
部屋の「お茶セット」の煎茶の品質が悪い。名旅館なら針のような茶葉を用意しておくべきです。
ダイレクトメールが極めて事務的、等々。
雲仙という、地理的に不利な要素を抱えています。 長崎空港からのアクセスも不便です。路線バスでは二時間半以上かかってしまいます。一日1往復しかない直行バスが、せめて2〜3往復あれば良いのですが。契約タクシーもあるそうですが三人以上になれば長時間は窮屈です。
このような不便さを押してリピーターは来ます。こういったリピーターを満足させるためには、もっともっと神経を尖らせている必要があるのではないでしょうか。
こういったことが克服できた時には、文字通り 「日本一の旅館」 になれると確信しています。
2005年10月中旬訪問