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憧れの旅館・ホテル

御宿かわせみ

 

飯坂温泉街の手前、立看板の案内で右折して福島交通飯坂線の線路を渡ると、道は田舎の生活道路の様相を呈する。「本当にこの道でいいのかな?」と自問しだした時、竹林の向こうにガラス美術館の建物が見えてきた。 高級外車の並ぶ第二駐車場を横目に我がレンタカーは砂利道を踏みしめ玄関先に進んだ。そこには三人の男衆が溢れんばかりの笑顔で待ち構えていた。車のキーを預け、荷物をそのままにして玄関から上がり込む。長い廊下を女性に先導されロビーに向かうが香が焚かれていて心地よい。空気はまさに名旅館のそれだ。

  

抹茶のサービス、ロビーか部屋、どちらがよいか問われたので部屋を選んだ。部屋に案内されると抹茶と塩味饅頭がでた。ところがその直後に煎茶のサービス、それに加えて、御飯粒の存在する「ちまき」まで出てきた。これはちーとやりすぎではなかろうか。せっかく夕食のため昼飯を抜いてきたのに・・・・・。しかし旨かった。

 

《部屋》

部屋は離れ「紫苑」。12畳と8畳の和室、濡縁付きの広縁に三点セット、檜の内風呂に石作りの露天風呂、それにトイレである。

  

「あれれ」と思ったのは庭の眺めである。宿から送ってもらった平面図では、濡縁の前には小さいながらも池が広がっていたはずが、池がない! 雑木林であった。「う〜ん」

 

トイレスペースがきわめて狭く、臭いの管理がいまひとつであった。小窓がついていたが、わずかに開けておきたくなった。
スリッパには部屋名が書いてあり、専用スリッパの感覚で使用できるのには驚いた。かねがね大浴場での入浴後、誰が履いてきたのかわからないようなスリッパを履かなければいけないことに少なからず抵抗感があったが、良い解決策のひとつかもしれない。

 

《大浴場》

ごく普通の石作りである。お湯は井戸水を沸かしているそうである。きわめて肌触りがよく、やわらかであり気持ちがよい。湯量も豊富である。バスタオルはやや薄手であるが、とても上質で使い放題であった。

 

《露天風呂》

これも普通の岩作りであり、庭は坪庭風にしつらえてある。
庭の向こうに低温サウナがあるが、これがまた、とても心地よい。身体に負担無く汗をかける。

露天風呂に浸かりながら感じたことだが、なんだか物足りないのである。「湯の香り」が無いのである。大浴場内では、いわゆるお風呂の臭いがこもるために特に感じなかったのであるが、露天では無臭であることに気付いてしまって温泉気分に浸ることができなかった。一長一短があるものだ。

 

《サロン》

大浴場のすぐ横にある。湯上がりにレモン水とりんごジュースの無料サービスがある。これは本当に嬉しいことなのだが、一つ残念なことがあった。
室内はクラシックなインテリアで統一されていて、ベルベット風の張り地のソファー、これが湯上がりの身体には鬱陶しいのである。ソファーの生地の厚みと質感で、じわーっと暑さがこもってきて長居ができなかった。冬ならともかく、熱を放散させる素材にすべきではないか。
部屋にもどって縁側で冷蔵庫のビールを飲み直した。

 

《内風呂》

無臭のお湯だが檜の香が心地よく「い〜湯」であった。沸かした井戸水と木の浴槽の香とは、すこぶる相性が良い。
露天風呂は大浴場と同じ石作り。かなり広めであるが周囲を竹垣で囲まれていて眺めは良くない。無いよりはましという程度。

  

 

《応対》

「下へも置かない、もてなし」とは、このことを指すのだろうか、素晴らしい応対である。
男衆達は、皆にこやかで良く気が付くし、嫌味がない。フロントの若い女性は、きびきびとして親切である。部屋係は中年の女性。上品で、おっとりとしていて、部屋の雰囲気を見事に和ませてくれた。それでいて仕事はきっちりとこなしている。
「もてなしの宿」として文句の付けようがない。電話やメールの対応でも最も素晴らしい宿のひとつであった。

 

《夕食》

 

懐石を基調としながら、和と洋が見事にマッチした料理であった。
料理人の才能なのだろうか。最初に出てきた胡麻豆腐の醤油の味付けで、その後の料理の素晴らしさを予想できた。
メインの強肴は、意気込みのわりには感動が薄い。好・不評が分かれる可能性も考えられる。
それ以後急に薄味に変わったのは、腹具合を考慮してのことなのだろうか。量は、ちょうどよかった。西瓜は、まだ走りで甘さとこくに欠ける。旬の果物がなければ無理に出すこともない。中途半端な果物では、それまでの素晴らしい料理の格を落としてしまう。

器のデザインや色使いもセンスあふれたものだった。

 

  

  

  

  

  

 

夜食に、小振りの「梅じそおにぎり」が出た。ややねばりのある御飯で冷めても美味しかった。

 

《オリジナル地酒》

 

《寝具》

敷き布団は薄手のウレタン系マット二枚にパッド、掛け布団は羽毛であった。掛け布団カバーが薄手であったせいか、掛け心地はとても良かった。寝心地は、まずまずといったところか。「俵屋」や「あさば」の豪華寝具には遠く及ばない。

 

《朝御飯》

起きぬけに、天然水のサービスがある。
わめてレベルの高い朝食といえよう。
サラダの醤油ドレッシングは見事。本当に和と洋が見事に融和している。焼海苔の保温容器も嬉しいかぎり。真名鰹の脂ののりがやや少ないことが残念であった。朝食のあさりの味噌汁は薄味であったが(夕食の止椀は濃味)、だし加減は勝ちすぎても負けてもなく見事であった。あさりの身の味もしっかりしていた。

 

《感想》

「俵屋」、「あさば」といった名宿のような強烈な個性には欠けるものの、すべてにおいて極めて高いレベルでバランスのとれた名宿であることは間違いない。個性が弱い分だけ「御宿かわせみ」の方が幅広い層から支持を得ることができるかもしれない。
「くつろぎの宿」と言うよりは「もてなしの宿」。
チェックアウトを終えたときには荷物はすでにレンタカーのトランクに納められていた。
男衆や部屋係数人の丁重な見送りをうけながら宿をあとにした。

狭い生活道路をゆっくり走って飯坂温泉街に向かった。温泉街を一周したのち車を一路東北自動車道へ走らせた。
「御宿かわせみ」がなぜ飯坂温泉と一線を画したのか、納得したような顔をして・・・・

今回、「茶寮宗園」・「御宿かわせみ」連泊したが、客が「リピート」する気になるのは、「ソフト」で満足できるかどうかにかかっている、と実感した。
完璧な「ハード」も「ソフト」が完璧でないと不満が残る。
しかし、「ハード」が完璧でなくとも「ソフト」が完璧ならば満足度はきわめて高い。

 

2004年5月初旬訪問

御宿かわせみの予約の際の参考に