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憧れの旅館・ホテル

指月

 

奥湯河原の海石榴から少し山側に進んだ所に「指月」がある。
宿泊するのは昨年出来たばかりの離れである。本館と道路を挟んだ斜め向かいにあった。

  

前日夜、宿から到着予定時間の問い合わせがあったためか、タクシーが宿に着くと和服姿の若い女性スタッフが車寄せで待ち構えていた。

  

そのまま離れに案内されて、お薄、丹波の黒豆、玄米茶のサービスを受けた。
黒豆は上品であっさりした味付けであり料理の味付けを予想させるものであった。

 

離れの玄関は至極あっさりとしていて、靴の脱ぎ履きには少しばかり不便さを感じた。 履物の整頓はその都度スタッフがおこなっていたようで知らないうちに所定の場所に収められていた。

  

部屋はベッドルーム仕様を予約してあったのだが、予想に反して全体が洋間であった。
まずまずの座り心地のソファーとロッキングチェアーがあり暖炉(電気製品である)と液晶テレビが備え付けられていた。大きなテーブルはなく小さなサイドテーブルがいくつかあるだけであった。

  

  

すっきりとした手入れの良い庭の向こうには藤木川が流れていて、対岸は山であった。渓流沿いというのは、どこでも気持ちが良いものである。場所として申し分のないのではないか。

  

 

応対

和服姿のうら若い女性が滞在中世話をしてくれた。
初々しく一生懸命に応対してくれた。

 

部屋風呂

部屋風呂は清潔感溢れた石造りの浴室。露天風呂は陶器製と思われる円形の浴槽であり屋根がついていた。露天風呂の浴槽は一人ならのびのびと入れるが二人ではやや狭いのではないだろうか。

  

夜間、ライトアップされて対岸の木々を眺めることができるため暗闇の恐怖感はない。 お湯は加水なしの源泉掛け流しで、かなり熱く湯温のコントロールが面倒であった。宿側に連絡すれば湯量の調節で湯温の調節を図ってくれるとのことであった。

  

きわめて気分の良い風呂で暇があれば何度も入ってしまった。
洗面所はシンプルな造りである。用具類のデザインは統一されていた。

  

  

 

寝具

就寝時にはスライディングウォールによってベッドルームが作られる。ベッドサイドのライティングデスクも充分な光量があり読書や書き物にはとても良いのだが、残念ながらライティングセットが備え付けられてなかった。
セミダブルサイズのベッドである。マットは充分厚みがあり硬めであった。もともと硬めのマットが好みなので寝心地はとても良かった。惜しむらくはシーツ類が普通であったことである。

  

 

夕食

離れ専用の食事処で食べる。カウンター式になっていて、女将がお酌や料理を一品一品運んでくれた。

  

なかなか話好きの女将であり、料理の話、建物の話、挙げ句の果てはペットの話題にまで話が及んだ。
BGM はなんとベートーベンのピアノコンチェルトであった。

  

  

  

  

  

  

  

  

(新潟の酒):銘柄は忘れたが口当たりがすっきりとして主張があまりなく料理のじゃまをしない酒であった。最後まで料理を楽しむためには、この種の酒(自己主張しない酒)が一番である。
  (茶碗蒸し):このわたを使うとのことであったが相方が好まないため白魚に代えてくれた。トロッとした口当たりで上品な味付けであった。
  (丹波の新豆と鰊の昆布巻):とろけるような昆布巻であった。出汁味は薄口。
  (虎魚の唐揚げ):骨までは食べることができなかった。
  (くわい・平貝のソテー・唐墨):唐墨もピンキリであるがピンのものは本当に旨い。
  (虎魚の薄造り):モミジおろしは極めて刺激的であったが、美味しい葱を巻いて橙酢で味わうのは素晴らしかった。肝も臭みはなかった。
  (明石の赤貝):色、形、素晴らしかった。
  (海老芋団子吉野葛あんかけ):鶉の挽肉との相性がとても良かった。出汁味は素晴らしかった。
  (間人蟹の蟹味噌甲羅焼き):磯の香りはあまりせず、あっさりとしていた。
  (間人蟹の焼き蟹):親方が目の前で焼いてくれたが、ほとんどレアであった。「レアな部分が残っている」といった焼き方のほうが甘さや香りの点で好みなのであるが。
  (蟹の爪):焼き蟹というよりもソテーしてあった。
  (聖護院蕪):味噌とのマッチングは絶妙。
  (明石の穴子鮨):あっさりとしたなかにも脂ののりは充分であった。写真にお箸の跡があるのはご愛嬌。
  (金目鯛と筍の焚き合わせ):走りの筍らしいが、やはり走りよりも旬のほうが好きだ。出汁味は素晴らしい。
  (若布の赤出し・自家製千枚漬)・昆布の佃煮:とても美味しい千枚漬であった。御飯の味はいまいち。
  (苺):大振りの苺であった。甘さはまずまず。
  (コーヒー):好きな時間に部屋に運んでくれた

 

朝食

夕食と同じ場所で食べる。BGMは和風で「春の海」がかかっていた。

  

  

  

  

(若狭鰈の干物):備長炭で焼いたとのこと。焼き加減は絶妙で皮の部分の美味しさは最高であった。
  (鮑のソテー・菜の花のお浸し):あっさりとしたなかに充分な味付けがなされてあった。 とても上品な味付け。
  (湯豆腐):手掻きの鰹節の歯触りと香ばしさは懐かしいものであった。何もつけずに食べても充分美味しい豆腐であった。
  (蕪とお揚げの焚き合わせ):お揚げの味付けが絶品で、出汁味も素晴らしかった。   (御飯・アサリの赤出し・漬物):赤出しは上品な味付けであった。
  (出汁巻き):出汁味の利いた味であった。
  (メロン):上品な甘さのあるメロンを出す店は少ないが、間違いなく上質のメロンだと思う。
  (コーヒー):朝はここで飲む。ヘレンドのカップがとても素敵だった。

 

感想

ここ指月は料理で有名な宿ですが、「離れ」は素晴らしいものでした。洋間でしたが、そこかしこに和の心を感じます。数寄屋の感性で造った洋間と言っても過言ではないでしょう。女将の美意識かもしれません、隅々にまで心配りを感じます。
寒い所ですが、エアコン・床暖房・電気製の暖炉と三ヶ所から暖を取ることができます。ひとそれぞれ好みの方法で過ごしやすく出来るのではと思います。
ベッド、ソファー、トイレスペース etc. の使い勝手がよく吟味されていて、とても居心地の良い離れでした。

 チェックアウト時、本館の部屋を見せてもらいましたが、離れに宿泊した後のせいでしょうかとても窮屈に感じました。まったく別の宿と思えるほどの違いでした。

  料理に関して言えば、○○産の△△といった食材があらわれますが、それよりもむしろ魚の焼き方・野菜の煮方・出汁の取り方といったほうに満足感を覚えます。上品な味付けの京風がベースにあると思いますが、素材の良さを出すために多くは薄味にしながらも炊き合わせなどは、やや濃い味にしてアクセントをつけていると感じました。
一言で日本料理といっても、旅館の範囲ですら「芸術ともいえる半水盧」・「家庭料理の極みの蓬莱」・「洗練された、あさば」・「出しゃばらない俵屋」・「切れ味鋭い海石榴」・「進取の、かわせみ」などまったく異なる個性に溢れています。
日本料理の奥の深さを充分に感じることができる宿でした。

離れにはもう一つ部屋があります。
ベッドルームが和室になっている部屋ですが、好みで選択することができます。

  

 

どちらも人気が出ること請け合いです。

 

2006年1月下旬訪問