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憧れの旅館・ホテル
海石榴
藤木川の上流、箱根の山々に抱かれるように「海石榴」がある。 端正なつくりの玄関先も、週末のためか賑わしかった。
宿に着くと、まず玄関脇のロビーで和三盆とお薄をふるまわれた。 その間にも次々と客が到来する。数人程度のグループ客が多いようである。
やがて部屋係の女性がやってきて部屋へ案内してくれた。 そこでお煎茶と和菓子がでる。
部屋は本館一階の特室「長楽」、池の前である。
電話での予約の際、予約係の若い？女性に、池の眺望第一とリクエストしたらこの部屋を勧めてくれた。とても丁寧で心地よい応対であった。 露天風呂付きの部屋は建物の隅にあり池の眺望は良くないそうである。 有名な「有楽」は斜めの眺望になりお勧めではなかった。 結果論からいくと、池の眺望は狭い基準室の「藻汐」「侘介」がベストであった。
「長楽」は１５畳の主和室、６畳の副室、伊豆石の内風呂、トイレ、それに玄関である。 広縁はなく、主和室からすぐ石造りのテラスがあり、やはり石造りの椅子とテーブルがある。足許は底の浅い池であり、数多くの鯉がすぐさま寄ってくる。池の向こうは林になっていてその向こうは川だそうである。
川を流れる水の音、「かじか」や「ひぐらし」の鳴き声、なかなかの風情。
旅館に「ひぐらし」の声は良く似合う。和室の作りはあっさりしているが、ＴＶがなんとも不釣り合いである。せめて液晶にして覆いを被せれば余程すっきりするのだが。
（応対）
部屋係は中年の女性、あっさりとした感じであったがとてもフレンドリー。しかし節目節目では、きりっとした振る舞いであった。 感心したのは食事を出すタイミング、まさに一品一品ちょうど食べ終わった時に次が出てくる。これだけ見事なのは初めてである。客で混雑している週末だというのに。 料理にこだわる宿の神髄か。
（大浴場）
石造りの普通の浴槽であるが、お湯がとてもよい。さらっとしていて、とてもやわらかく、ずっと浸かっていたいと思わせるお湯であった。 露天風呂は岩をくり抜いたものらしい。小振りであり客が多いと待たなければならない。遠くに山並みが眺望できる。
タオル類は安っぽい。 湯上がりにサロンで梅ゼリーに、生ビールか冷茶のサービスがある。「禁煙マーク」があったのは非常に嬉しかった。
（夕食）
正統的会席料理。開始が１８時か１８時３０分の選択。
鰹だしを基本とした、あっさりとした味付けであるが、心持ち濃い味にしている。 味は素晴らしい。すべての料理の隅々にまで料理人の細やかな神経を感ずる。 「旨い物を食べさせたい」という、料理人の自負と自信を充分感じる料理であった。
料理というもの決して料理長一人で出来るものではない。 少なくとも数人の腕利きがいなければ、チームとしての完成度が極めて高くなければ、これ程の料理を出すことは出来ないのではないか。 頑固なまでのこだわりを感ずることもあるが、それはそれで素晴らしいことだと思う。 料理の美味しい旅館は一朝一夕で出来るものではない。 伝統の力の凄さを、まざまざと感じさせられた夕食であった。
（寝具）
ウレタン系マットと綿の敷き布団の二枚組でやや硬め。掛け布団は羽毛。 リネン類は普通であった。 もう少し寝心地の大事さを認識し、より良い寝具へと研究してもらいたい。
上質の浴衣の他に、寝巻用の浴衣が用意されていた。
（朝食）
開始が、８時か８時３０分の選択。 典型的懐石料理の朝食。朝粥が選択できる。 夕食もそうであったが、漬け物が絶品。自家製らしいが、本当に旨い漬け物であった。 今までのなかで最高の漬け物だと思う。 漬け物の旨い料理屋は、間違いなく料理も美味しい。
（感想）
ロビーやサロンの雰囲気は一世代前の旅館といった感がなきにしもあらずでしたが、お湯良さや、料理の素晴らしさは、「また訪れてもいいな」という思いを持たせてくれました。
名旅館をいくつか経験することができましたが、 全てに共通することは「料理が美味しい」ということでした。どこも、それぞれの特徴があり、とても美味しかったですね。
なかでも特に印象に残った旅館の料理を挙げてみます。
「半水盧」の超弩級懐石料理は別格として、「あさば」の郷土料理・「御宿かわせみ」の和洋折衷懐石料理・「蓬莱」の家庭料理・そして今回の「海石榴」の正統派懐石料理。
どこも甲乙つけ難い、素晴らしい料理でした。この先は「好みの問題」でしょう。
美味しいものを食べるって、幸せですね。 ＼ (^○^) ／
２００４年７月中旬訪問